「~の中」が必要なときとは?

「箱の中にいる」?「箱にいる」?

「ネコはどこにいますか」と聞かれて、上の絵のような状況だった場合、何と答えますか。直感的に、aです。

1)ネコはどこにいますか。
a. 箱の中にいます。
b. 箱にいます。

次の例はどうでしょうか。

2)C先生はどこにいますか。
a. 55教室の中にいます。
b. 55教室にいます。

直感的にはbです。ただ、aも場合によっては使うと思います。

「~の中」を付けたり付けなかったりするのはなぜなのか、という質問は昔からありました。それについて、詳しく見ていきたいと思います。

接続する名詞の性質から考える

「~に」「~の中に」の、「~」に入るのは名詞です。その名詞の性質によって、必要なとき、どちらでもいいときがあるのではないでしょうか。1)では「箱」、2)では「教室」です。

1.場所(範囲の決まった空間)を表す名詞の場合は、「~に」で十分。

2)「教室」が当てはまります。範囲が決まっているので、あえて「中」という表現を付ける必要はないのだと考えます。

3)この町に外国人がたくさんいる。

4)運動場にハードルがある。

5)図書館に古文書がある。

「『~に』で十分」と書いた理由は、「~の中に」が使用不可とは言えないからです。範囲の「中」であることを明確に示したい(強調している)感じになるでしょう。ただ、4)の場合、「運動場の中に」というのは、やや違和感があるような…。

6)この町の中にまだ犯人がいるはずだ。

この場合は、「外」ではないということで「中」とはっきり言いたいのではないでしょうか。

2.場所を表す名詞以外の場合は、「~の中に」を使ったほうがいい。

最初は、「箱」を「空間」として捉えられるのではないかと思っていました。1)の例で、「b.(ネコは)箱にいます」がなんとなくしっくり来ませんでした。

「箱にいる」と言われて、「中にいる」というのが通常働く推論です。そう思うので、別に「中」が無くてもいいと思うのでしょう。ただ、「箱にいる」だけだと、いまいちはっきりしないような気がします。極端な話、「上に載っている(=蓋の上にいる)」と思う方もいるかもしれません。位置の表現がないと、適切に伝わらない可能性があります。

次の「車」「落ち葉」の例も見てみましょう。

7)a. C先生は車にいます。/b. C先生は車の中にいます。

8)a. ??ペットのポチは落ち葉にいる。/b. ポチは落ち葉の中にいる。

「車」は「~に」だけで良いとしても、「落ち葉」では「~に」が言えません。「車」は、「箱」と同様、範囲が決まった空間に捉えやすいので、原則1に近いのでしょう。完全に場所とみなしにくい「落ち葉」では、「~に」だけでは存在場所がはっきりわかりません。位置の表現が必要になります。

特に「中」であることを示す必要がある場合

上で見た「箱」「車」と同様、「鞄」も空間と見なしやすいモノの一つだと思います。存在文以外でも考えてみると、「中」とつけることで、場所がより明白になります。

職務質問の場合を考えてみました。

9)警察官:鞄の中を見せてください。

警察官は持ち物検査をするので、中を見たいわけです。「鞄を見せてください」と言われただけで、中まで見せる市民もいるとは思います。しかし、悪い市民は屁理屈を捏ねて、「鞄(外側)を見せたじゃないか!」というかもしれません。屁理屈で言葉の使い方を考えるのはどうかと思われそうですが…。言いたいことは、「中」であることを「はっきり示す」ということです。

10)b.は、いつも注意しているにもかかわらず、まだちゃんと捨てない人に苛立って、「中に入れろ」と強く言いたい気持ちがあるように思います。いかがでしょうか。

10)a. 紙類はごみ箱に捨ててください。/b. 紙類はごみ箱の中に捨ててください。

通常は言われなくたって、ごみはごみ箱に入れるわけです。ですが、わざわざ「中に」ということは、そこには何らかの意味が含まれているのでしょう。

まとめ

1.場所(範囲の決まった空間)を表す名詞の場合は、「~に」で十分。

2.場所を表す名詞以外の場合は、「~の中に」を使ったほうがいい。
 (空間的な要素があるモノは「中に」がなくてもいい十分な場合がある)

※空間的な要素があるモノというのは、「車」「箱」「鞄」「ごみ箱」など


とりあえず、この2点でどうでしょうか。これはあくまで学習者に最初の段階で示すならば、と考えた説明です。

「中」であることを明示的にする必要がある場合には、「~の中に」にしたほうがいいと思いますが、それがどういうときなのか理解させるのは、次の段階でいいのではないでしょうか。

学習者も直感的に「空間的な要素があるモノ」と「『中』をつけること」の関係を考えるのではないでしょうか。そこであえて「モノなんだから、中を付けなければダメ!」とするのは、厳しすぎると思います。

上記の原則で合わないものが見つかったら、また検討したいと思います。

『日本語教育のための文法コロケーションハンドブック』

日本語教育のための文法コロケーションハンドブック』です。初級程度の文法93項目といっしょによく使われる言葉について書かれている本です。現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCJW)を用いて調べているそうです。

教科書に載っている例文だけでは足りない、なんとなくあまり使わない語の組み合わせだな…と思うことは多々あります。そういうとき、例文を考える役に立つ本です。

全部をじっくり読み込んだわけではありませんが、ある日「~ませんか」の項をなんとなく見て、驚愕しました(買ってからずいぶん放置していたので…(笑))

「勧誘」で使われることが少ない…と書いてありました。(´・ω・`)えー。「そう思いませんか」という丁寧な問いかけが圧倒的だそうです。勧誘にしてもイベントへの「参加」でまとめられるとのことです。使用場面を考える際の参考にもなりそうですね。

『絵で導入・絵で練習』

絵で導入・絵で練習』(凡人社)

初級でよく教える文法の絵教材です。冊子には絵の一覧、導入例・例文などが掲載されています。CDROMにデータ版も入っているので、プリントやスライド作成の際にも便利です。

最近、同僚から指摘があったんですが、「お風呂に入りながら、本を読む」という導入例がありました。継続動詞ではないものを出すのは問題ありですね…。状況はわかりますけどね。ご注意ください。

初級漢字の練習

漢字と文法は同時に

日本語学習の最初はひらがな・カタカナから文字を覚えていきます。それと同時に、文法や表現なども並行して学んでいくことになります。ひらがなとカタカナの導入が済むと、漢字へと移っていくと思います。「漢字は膨大…」と思われることは必至(!?)と私自身は感じています…(´・ω・`)うーん。

しかし、漢字「だけ」覚えると、やっていられないと思うので、「文の中の漢字」を意識させたいと思いました。ちょっとしたことですが、文中の漢字が「あ、これ勉強したし、読める」となることが、モチベーションに繋がると考えています。

方法1:文と絵を対応させる

イラストと既習文法で作った文をいくつか用意します。このイラストの場合、文は「すみません。花びんはどこですか。」です。読めるかどうかを確認するというより、「花びん」という文字と既習事項を合わせて理解できるかどうかを見ます。花の意味から連想していく場合もあるので、まずは漢字と意味が分かるだけでもできる活動だと思います。

方法2:文と絵を対応させ、漢字の読みも問う

方法1にもう1つ負荷をかけるものです。文は「あの、いま、何時ですか。」「えー…三時十五分です」を使います。文とイラストを組み合わせるのはもちろんですが、漢字の部分に下線を引いて、読みも確認します。私はこのタイプの問題を試験に取り入れたことがあります。問題のバリエーションもそうですが、読めなくても、全体の漢字から、意味と状況は分かることもあるからです。(イラストの右の時計には、針を描き込みます)

方法2で、試験に取り入れたときは、もちろん「漢字のテスト」なので、配点は「絵合わせ」より「読み」のほうが高くなっています。(´-ω-`)「読めないけど、漢字の字形と意味はなんとなく覚えている…」ということもあります。最初はそれが結構モチベーションにつながる気がします。初級漢字は、読み書きが当然、というのは後々の話で、現段階では、記号的に捉えられることも大切かと思います。

また、うまくいけば、読解のときのストラテジーの1つにもなると思います。読めないけれど、見たことがあって、意味もだいたいわかるから、状況は読み取れた…ということも。本音は、ちょっとは覚えてきた人の救済策…少しでも得点が取れればということなのでした。

イラストはわずかですが、こちらからダウンロードできます。